プライマリケア医の認知症診療入門セミナー
小阪憲司:編著

2011年発行 A5判 240頁
定価(本体価格3,000円+税)
ISBN 9784880028262

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内容の説明▼

序 文

 わが国はすでに超高齢社会にあり、現在でも認知症患者はごく軽度例を含めると270万に達すると推定され、まだ当分は高齢化が進むため近い将来には300万人を超えることが予想される。
 認知症の原因は多種多彩であり、認知症は高齢者のみならず、より若年の人にも発症するが、高齢者に圧倒的に多いことはご承知の通りである。一方、認知症の専門医は少なく、わが国ではまだ1000人あまりにすぎず、県によっては数人しかいないところもある。したがって、認知症の患者さんを診るのはプライマリケア医であることが圧倒的に多いと思われる。多くのプライマリケア医は日ごろの臨床の中で多かれ少なかれ認知症患者を診ているはずであり、診ざるを得ないと思われる。
 この本は、日ごろの診療に役立つように、主な認知症をプライマリケア医に知ってもらうために、各専門家が具体的に症例をあげ、診断や治療や対応策についてわかりやすく解説したものである。とくに三大認知症であるアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症(認知症を伴うパーキンソン病を含む)、血管性認知症、さらにより若年に多くこれらに加えて四大認知症に数えられる前頭側頭型認知症に焦点が当てられているが、その他の重要な認知症疾患も加えてある。項目によっては、プライマリケア医にはそこまでは要求されないような内容も含まれていると思われるが、一応この程度は知っておいていただきたいと思われることが記載されていると思う。ご自分の限度をわきまえたうえで、診断や治療や対応に困られた場合には早いうちに気楽に認知症のサポート医や専門医に相談または紹介されて、患者さんやそのご家族がよりよい医療を受けられるように心がけていただきたい。 
 この本に記載されている程度の認知症の診療を行うには専門医でもかなり時間を要することである。しかも、認知症診療には、診断・治療をすればよいというだけではなく、種々の対応が必要であり、医療のみで終わるものではない。医療・福祉などの連携のもとにその経過を長く追っていく必要がある。それらをうまく行うには、やはり早期に発見し、正しい診断と治療を含む早期の対応がまず必要である。
 この本がプライマリケア医の先生方の日ごろの診療の座右となり、役立てていただけることを願っております。

平成23年9月
小阪 憲司

おもな目次▼

CASE 1
「さっきのことなのにすぐに忘れる」と訴え、35年続けた茶道師匠も止めてしまった症例
朝田 隆
CASE 2
徐々にもの忘れが目立つようになり、意欲低下や情動の不安定さを訴えるようになった症例
柴田展人、新井平伊
CASE 3
もの忘れと仕事上のミス、イライラ感で休職した症例
川勝 忍
CASE 4
もの忘れが目立ち、着替えも上手にできなくなった症例
松原洋一郎、伊藤小佳子、一宮洋介
CASE 5
もの忘れ、不安感とともに「貴重品を盗まれる」と訴える症例
小田原俊成
CASE 6
意欲低下、抑うつ傾向が目立ち、「トイレに人がいる」「私に無断で人が家にいる」などと訴える症例
小阪憲司
CASE 7
健忘と易転倒性に加え、「虫が這っている」「椅子に子供が座っている」などと訴える症例
井関栄三
CASE 8
転びやすく、動作が遅くなり、さらに「知らない子供がいる」と訴えるようになった症例
小阪憲司
CASE 9
パーキンソン病と診断され、治療中に幻視が出現し、その後認知機能の低下もみられた症例
森 秀生
CASE 10
脳梗塞発症から数年後に感情の起伏が激しくなった症例
河上 緒、都甲 崇
CASE 11
脳梗塞の既往があり、易怒性、攻撃性が目立つようになった症例
水上勝義
CASE 12
くも膜下出血後に行動障害、易怒性、理解力の低下が出現した症例
川畑信也
CASE 13
仕事の能率低下とミスの増加を自覚し、上司が受診を勧めた症例
福井俊哉
CASE 14
過食、嗜好の変化など食行動異常で発症し、次第に意欲低下、こだわりが強くなったが、受診理由を尋ねると「特に困ることはない」と淡々と答える症例
池田 学
CASE 15
言葉が出にくくなった、同じ言動を繰り返す、徘徊が目立つなどの精神症状が発症して、1年以内に上肢の筋力が低下し、嚥下困難が加わってきた症例
三山吉夫
CASE 16
言葉の出にくさと性格・行動の変化を認める初老期症例
橋本 衛
CASE 17
パーキンソン症状で始まり、自分本位な性格変化とともに頸部が後ろに反り、眼球が固定気味になった症例
天野直二
CASE 18
手先が不器用になり、徐々に運動障害が進行する症例
池田研二
CASE 19
舞踏運動から始まり、徐々に意欲低下、記憶障害が出現した症例
葛原茂樹
CASE 20
歩く時のバランスが悪く、軽いもの忘れがあり、時に尿失禁が見られる症例
森  敏
CASE 21
書字障害を初発として、のちに記憶障害などが出現した症例
野崎一朗、山田正仁
CASE 22
交通事故後に、前頭葉機能障害と記憶障害を中心とした進行性知能低下を呈した症例
福井俊哉
CASE 23
連続飲酒後に急性に認知症症状が出現した症例
森山 泰、三村 將
索 引